日本オランウータンリサーチセンター

論文

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The slow ape: High infant survival and long interbirth intervals in wild orangutans
「スロウな大型類人猿:野生オランウータンの高い幼児生存率と長い出産間隔」

 

久世も共著者として参加し、ダナムバレイのデータを含む論文が、人類学の一流誌「Journal of Human Evolution」に2018年12月号に掲載されます。(オンライン公開は2018年10月)。
この論文の重要な知見は

 

(1)今まで種や亜種で違いがある、と言われていたオランウータンの出産間隔は、平均7.6年で種や亜種による違いがないことが判明した。この出産間隔は哺乳類の中で最長。

 

(2)オランウータンの雌がオトナになる(初産年齢:15歳頃)までの生存率は94%で、野生動物としては最も高い(これを超える生存率は、先進国に住むヒトの女性しかいない)。つまり、20世紀になるまで、地球上で最も生存率の高い動物は、ヒトではなくオランウータンだった。

 

(3)オランウータンは究極の少産少子(少死)社会=「スロウ(遅い)」生活史を進化させてきた為に、現在起きている生息地の破壊は、彼女達を絶滅に追いやる危険性が非常に高い。

 

の3点です。

 

オランウータンが高い生存率を維持できるのは、樹上性で単独で暮らす為、感染症にかかることがほとんどなく、捕食者にも襲われることが少ないから、です。現代人が誕生する30万年前よりもはるか前に、現代の先進国並の高い生存率を達成していた、「少産少死社会の大先輩」、オランウータン。私達は彼・彼女達の暮らしと未来を守ることできるでしょうか。
以下論文の要旨をご紹介します。

 

<要旨>
オランウータン(Pongo属)は哺乳類の中で最も出産間隔が長く、極端に「スロウ(遅い)」生活史(※注1)を進化させてきた、と言われている。このような遅い生活史は、死亡率が低くなければ成り立たないので、オランウータンの生存率は非常に高いことが予想される。しかし、オランウータンの生活史を推定する既往の研究は、ほとんどが飼育下(動物園)の個体か、非常に少数の野生個体を対象としていた。今回、我々は10年以上(12〜43年)調査を継続している7ヶ所の調査地で集められた、詳しく記録されている個体データをまとめて分析した。厳密な基準でデータを選択し、幼児生存率、出産間隔、初産年齢について、種/亜種間、島間で比較した。その結果、出産間隔は平均7.6年、雌雄ともに乳児(離乳前の子)の生存率が非常に高いことが判明した。初産年齢(15歳頃)までの雌の生存率94%は、今まで報告されている野生下の哺乳類の中で最も高い。同様に経産雌の年生存率も非常に高かったが、寿命は計算することができなかった。今回のデータはスマトラオランウータンとボルネオオランウータンの間で、主要な生活史パラメーターについて、違いはみられないことが明らかになった。子の高い生存率は非常に顕著で、20世紀の現代人をのぞいて、この生存率を超える個体群はない。オランウータンの生活史は、低死亡率下ではヒト科(Hominoid)が遅い生活史を進化させることを明示している。オランウータンは、(果実)生産量が低い環境に生息しているにも関わらず、単独で樹上生活を送っている為に、生存率が高く、個体群を持続可能なレベルに保つことができていた。しかし彼女達の遅い生活史は、劇的な生息環境の変化に直面している現在では、個体群の壊滅的な打撃をもたす可能性が非常に高い。

 

 

van Noordwijk MA, Utami Atmoko SS, Knott CD, Kuze N, Morrogh-Bernard HC, Oram F, Schuppli C, van Schaik CP, Willems EP. 2018. The slow ape: High infant survival and long interbirth intervals in wild orangutans. Journal of Human Evolution 125:38-49.
https://doi.org/10.1016/j.jhevol.2018.09.004

 

(※注1) 生活史(Life History):生物の一生の特徴を表す専門用語。「Slow(遅い)生活史」とは、一度に生む子どもの数が少なく、子の成長は遅いが寿命も長く、生存率が高い(世代交代が遅い)。少ない数の子を大事に育てる繁殖様式で、霊長類やゾウ、クジラなど大型哺乳類に多く見られる。「Fast(早い)生活史」とは、一度に生む子どもの数が多く、子の成長が早く、寿命も短く、生存率が低い(世代交代が早い)。多くの子を産むが、親はほとんど育児をしない繁殖様式で、ネズミや魚類、両生類などの小型の脊椎動物や、昆虫やプランクトンなどの無脊椎動物でよく見られる。

 

 

論文「弱いオランウータンの雄は第一子の父親になる −父子DNA鑑定で判明した弱い雄の繁殖戦術−」田島 知之

 

田島が執筆した論文が、2018年2月、学術誌 PRIMATESに掲載されました。
解説が上記リンクにに掲載されております。是非ご覧ください。

 

 

ボルネオ島のセピロク・オランウータン・リハビリテーションセンターで、どのようなオスが子どもを残しているのか、DNA親子鑑定と行動観察から明らかにしました。

 

今後は、ダナムバレイでも同じ手法で研究を進めます!

 

 

寄稿「人はなぜ他者に与えるのか」 田島 知之

(株)富士通総研の季刊誌「ER」2017年4月号に寄稿しました。
上記リンクより、季刊誌(PDF)をダウンロードしてお読みいただけます。

 

ヒトが日常的に行う「食物分配」について、ヒト以外の霊長類の研究からどのようなことがわかってきたのかを寄稿しました。

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